春を名残惜しむかのように桜舞い散る今日の佳き日に、ご来賓各位のご臨席のもと、多くの保護者の皆様方のご出席を賜り、令和七年度宮崎県立高千穂高等学校第七十八回入学式を挙行できますことを心より感謝申し上げます。
ただいま入学を許可されました九十三名の新入生の皆さん、在校生、教職員一同、心から歓迎いたします。
新入生の皆さん、本日のこの喜びは皆さん一人ひとりの努力の賜ではありますが、その陰には皆さんを慈しみ育てられたご家族、教えを受けた小中学校の先生方など、多くの方々の支えがあったことを忘れてはいけません。本日新しく第一歩を踏み出すにあたり、これらの方々のご恩に報いるためにも、より一層の努力を期待いたします。
本校は、大正六年に西臼杵郡立農学校をその始まりとし、今年で創立一〇八年を迎える県内屈指の伝統校であります。しかしながら、伝統や歴史の長さだけを誇る学校ではありません。最近では令和二年度から、高千穂町、日之影町、五ヶ瀬町の西臼杵三町のご協力をいただき、在校生への支援はもちろんのこと、本校の魅力向上のために、地域で学び、地域を学ぶことを目的に、他の学校では見られない、様々な連携した取組を行っております。また、昨年度実施されました、入学者選抜検査から全国募集を行い、本年度、遠くは岐阜県から、本校へ入学いただくなど、本校の教育活動が高い評価をいただいているものと考えております。本校に寄せられた地域社会の期待に応えることこそが、目指す姿であり、さらなる飛躍と挑戦をしていく学校、そういう学校づくりを皆さんと一緒に進めたいと考えています。
さて、新入生の皆さん目標はありますか?今どんな希望をもっていますか?皆さんの中には、例えば自分自身を変えたい、今できないことをできるようになりたい、就きたい職業がありそのために大学へ進学したい、部活動において全国で活躍したい、あるいは目標が見つかっていないという人もいるかもしれません。どんな小さなことでも構いません。自分の頭でよく考え、目標や希望を持つということはとても大切なことです。もちろん、高校三年間の中で、さまざまなことを経験しいろいろな方と出会うことにより、目標や希望が変わることもあるかもしれません。
「人は結局、自分の思ったとおりの自分になる」
ドイツの文豪 ゲーテの言葉です。人は自分の思い描いた自分に近づいていくということです。どのような自分でありたいか、目標、希望とする自分自身の未来の姿を描くことが大事です。そして、これから始まる高校生活において、今何をすべきかを考え、判断し、行動することがとても重要となります。とにかく目標や希望が見つかったら、自分を信じ、失敗を恐れず、それに向かって挑戦してもらいたい。失敗を繰り返し失望したりくじけそうになったりしても、皆さんの周りには仲間、家族、地域の方々、そして先生方がいます。声をかけてくれます。励ましてくれます。助けてくれます。
元プロ野球選手で監督も務められた野村克也さんは、『「失敗」と書いて「成長」と読む。人は一つ失敗することにより、一つ以上のものを身につける。ところが、「成長」と読めない失敗がある。それは不真面目な失敗である。手抜き、真剣さのなさである。特にやるべき事がわかっているのに、それをやらないことによる失敗は成長につながらない。』と述べています。皆さんには自分自身がどんな未来の姿になりたいのか自分の頭でよく考え判断し、そして行動する。そのような高校生活を送ってほしいと心から願っております。
最後になりますが、本日ご出席いただいております保護者の皆さまにおかれましては、つい先日まで中学生だったお子様の後ろ姿に、少し成長した姿を感じていらっしゃるのではないかと拝察いたします。本校は比較的小さな規模の高校です。しかし、これは大きな強みでもあります。生徒一人ひとりに活躍の場が保証されています。また、本校は生徒同士はもちろんのこと、教職員と生徒が、互いに尊敬し合い、支え合い、高め合う集団となることを目指しており、生徒一人ひとりに対し愛情を、時には厳しさをもって支援してまいります。三年後の春、お子様が自律し信頼される大人へと成長できるためにも、保護者の皆さまと学校が連携し同じ目標に向かって歩むことが、何より大切であると考えております。どうか本校の教育方針にご理解をいただき、ご協力とご支援を賜りますようお願いいたします。
さて、新入生の皆さん、いよいよ高校生活が始まります。皆さんの後ろで先生方、保護者の皆さん、そして今までお世話になった多くの方々が見守っています。皆さんは多くの見えない想いに支えられています。背中に添えられた見えない想いの存在を感じながら安心して、高校生活の第一歩を踏み出してください。今後の皆さんの高校生活が充実したものになるよう教職員一同、全力で支援することをお誓いし、式辞といたします。
令和7年4月10日
宮崎県立高千穂高等学校
校長 松田太郎